特集
2016/11/14(月)
ELLE CINEMA AWARDS 2016

映画ジャーナリストが選ぶ、2016年のベスト映画【前編】

エルでおなじみの映画ジャーナリスト11名が、部門別に2016年のベスト映画&俳優を選出。映画を知り尽くしたプロたちが選んだベスト3を、前編、後編の2回に分けてお届け。

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『ブルーに生まれついて』2016年11月26日(土)より、Bukamura ル・シネマ、角川シネマ新宿ほか全国公開。 (C)2015 BTB Productions Ltd and BTBB Productions SPV Limited. ALL RIGHTS RESERVED.

恋愛映画部門BEST3/立田敦子さん

『ブルーに生まれついて』
ジャズ界で初めてスターとなった白人の天才トランペット奏者チェット・ベイカー。甘いマスクと中性的な歌声で50年代には“ジャズ界のジェームス・ディーン”と呼ばれるほど人気を得る。が、70年代にはドラッグがらみのトラブルから顔面に重症を負い、ミュージシャン生命の危機に立たされた。この作品は、そんな彼が、ただひとつの愛だけを支えに、どん底から這い上がる姿に焦点を当てている。人生の苦境に立たされたベイカーが、恋人と寄り添いながら、自らの音楽と向き合う健気な姿が感動的だ。ベイカーを演じたイーサン・ホークの繊細な演技もプラスされ、この上なくロマンチックでエモーショナル。伝記というより、ラブ・ストーリーとして観たい1本。

『キャロル』
アーティスト志望の若い女の子テレーズ(ルーニー・マーラ)と不幸な結婚に苦しむ富裕層の女性キャロル(ケイト・ブランシェット)。まったく違う生き方をしていたふたりが、偶然出会い、惹かれ合うようになる……。1950年代のN Y、保守的な時代を背景に、女性同士の密やかで美しく、濃密な愛が繊細なタッチで描かれる。『太陽がいっぱい』などで知られる女性ミステリー作家パトリシア・ハイスミスが、自らの体験を投影させ、別名で発表した小説が原作。“禁断の愛”などというと古めかしい感じだけれど、社会の因習に抗って、自分に正直に生きることを選択したふたりの葛藤や純粋な思いは、時代を超えて胸を打つ。50年代ファッションのゴージャスさも見逃せません。

『エクス・マキナ』
近い将来、こんなことが本当に起こるかも?SFながらリアリティのあるラブ・ストーリーが、『エクス・マキナ』だ。 IT企業で働くケイレブは、社長宅である研究施設で、人工知能をもったロボットのエヴァと出会い、恋に落ちる。彼女を脱出させようと企てる……。専門家でも人間と間違うほどの感情をもつようになったといわれるAIロボット。苦痛も喜びもそして恋さえも可能だとすると、彼らとの恋愛駆け引きに勝てるのだろうか?ラストシーンは、なかなか切ないものがある。インディペンデント映画賞を総なめにしたSF作家アレックス・ガーランドの監督デビュー作。エヴァを演じた魅惑的なアリシア・ヴィギャンデルの存在が、よりこの恋愛に真実味をもたらしている。

●ベスト男優
エディ・レッドメイン(『リリーのすべて』)
去年は天才物理学者ホーキンスを演じてオスカーを獲得した英国の実力派。『リリーのすべて』では、世界で初の性転換手術を受けた実在のアーティストを演じて芸達者なところを見せつけた。女性よりも美しく、フェロモンも全開。新作『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』ではファンタジー界も魅了すること間違いない。

●ベスト女優
アリシア・ヴィギャンデル(『エクス・マキナ』『リリーのすべて』)
『エクス・マキナ』ではロボット、『リリーのすべて』では、女性になりたい夫をひたむきに愛する妻という両極端な役柄を演じ分けた若き実力派。『ジェイソン・ボーン』ではCIA捜査官を演じた。お人形のようにキュートなルックスなのだが、ときに肝っ玉母さんのような芯の強い表情も垣間見せる。今後、映画賞の常連になりそう。

  • 立田敦子/Netflix、Huluなど配信サービスでドラマ中毒に陥った1年。『デアデビル』と『スーツ』、『ハウス・オブ・カード 野望の階段』、『ザ・クラウン』など見逃せない作品ばかり。近著『どっちのスター・ウォーズ』(中央公論新社刊)

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