特集 2017/8/22(火)
女性たちが支えたアメリカン・アートの歴史

女性たちが創ったMoMA vs. 男たちのMET

モダン~コンテンポラリーアートの流れにおいて、重要な様式や潮流を発信してきたアメリカン・アート。そこにはあらゆる方面で深く関わり、アートを育てた女性たちがいた。今も変わらない男性優位の体制の中、アートシーンを力強く開拓していった女性たちに、エル・オンラインでおなじみ、フォトリサーチャーでもある在米ライター、オー・玲子さんがフォーカスを当てる。

ペギー・グッゲンハイム、1969年撮影。

Photo: Getty Images

MoMAに刺激されたグッゲンハイムの姪
 
いっぽうで、1800年代中ごろから徐々に認められていた女性財産所有権により手にしたありまる富を背景にヨーロッパへと旅し、そこで触れたアートに刺激を受け、精力的に活動する“女子相続人”たちもいた。タイタニック号の事故で早世した父と、セリグマン家から嫁いだ母のもとに生まれたペギー・グッゲンハイムは、1920年代にパリのモンパルナスに移り住むと、マン・レイやマルセル・デュシャン、コンスタンティン・ブランクーシらと親交を深めるとともに、当時パリでサロンを開いていたナタリー・バーネイを通してジューナ・バーンズ、エマ・ゴールドマンとは親友になった。この頃のモンパルナスにはガートルード・スタインが住まい、ボヘミアン的ライフスタイルを送る女性たちの多くがレズビアンだった。
 
1938年に自身のギャラリーを設立後、MoMA設立に刺激を受け今度は美術館の創立を目指すようになった。ちょうど叔父のソロモン・R・グッゲンハイムが自身の名を冠した財団を設立していたこともあり、美術批評家のハーバート・リードの指示のもと精力的にコレクションを始める。第二次大戦後にヴェネチアのカナル・グランデに移り住むと、これまで集めてきた膨大なコレクションの大半を叔父が設立したグッゲンハイム美術館に貸与し、残りを屋敷に集め、グッゲンハイム財団の美術館のひとつ「ペギー・グッゲンハイム・コレクション」として設立した。

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  • オー・玲子(ライター・リサーチャー)/学習院大学哲学科美学美術史専攻卒。写真通信社、海外誌を中心にフォトリサーチャーとして勤務後、現在アメリカにてライターとして活動。

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