特集
2018/05/04(金)

ワークシーンで実践! 印象アップの声の使い方講座

そこのあなた、「声」で損をしていませんか? ファッションやメイクといった見た目は就活でうるさく教えられるものの、客観視するのがなかなか難しいうえに、その効果も広く知られていないけれど、実は大切なのが声。そこで、ビジネスシーンで使える印象アップの話し方を、声とコミュニケーションのエキスパート、東京女子大学の田中章浩教授にASK。声が人に与える印象を正しく理解して、早速実践すれば滞っていた仕事もうまくいく⁉

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Photo: Getty Images

【はじめに】日本人は声! 「人は見た目が9割」はウソ

―――そもそも人は、相手の「声」でどのくらい印象を判断しているのでしょうか?
 
どのくらいというのは数値ではなかなか言えません。ですが、個人によっても異なることを前提として言えば、日本人は欧米人と比べて相手の感情を読み取るときに「声」を重視する傾向にあります。一方、欧米人は「声」よりも「顔」、つまり表情で判断する傾向が強いです。コミュニケーションの場面で、人は言葉とそれ以外のものを伝え合っています。非言語コミュニケーションには、喜怒哀楽などの感情のほか、印象も含まれますが、それを日本人は声から優先して読み取ります。欧米人はそれを表情の変化などから読み取るのが得意です。

―――声を重視するとコミュニケーションはどう変わるのでしょう?
 
カチンときたときに、顔で偽の笑顔は作れても声ではなかなか偽れないですよね。愛想笑いの75%は見破れるというデータがある一方、声は偽りにくい。調査したところ日本人は(そんな偽りづらい声のトーンから)隠れた感情を読み取ることが得意なので、日本社会は欧米社会より感情を隠したりすることが難しいと言えるかもしれません。でも印象を変えることは不可能ではありません。「日本人は何を考えているかわからない」と言われることもありますが、感情を表現するチャンネルが顔なのか声なのかが違うだけ。それがわかっていれば、欧米の会社でも日系の企業でも対応の仕方を変えるだけで済みます。

―――「人は見た目が9割」という説もありますが、声が与える印象も大きいということですよね。
 
「人は見た目が9割」というのは、「メラビアンの法則(※注)」の解釈が一人歩きして広がっているだけで、まったく正しくないんですよ。大前提として、視覚と聴覚では得意分野が違います。視覚は空間的な認知が得意なので、「どこに存在するのか」は目を信じてしまう。たとえば目を閉じて後ろの人がしゃべったら、「声の主は後ろにいる」とわかりますが、目の前の人が同時に口を動かしていると、声の主は目の前の人だと錯覚してしまいます。これを利用したのが腹話術です。ところが時間的な認知は音のほうが15倍ほど精度が高い。印象についても、顔のほうが強い印象を与えるものと、声が強いものがあり、それぞれ補い合っています。

―――もともとの声質は変えられずとも、声を演出することは可能ですか?
 
たとえばすごく怒っているときは「感情」なので、それを変えるのは難しいです。ただ「印象」はある程度、操作できます。その際のポイントとして「声年齢」というものがあり、これは声の「高さ」と「抑揚」(声の高低のレンジ)が大きな判断要素となります。声が低くて、抑揚があると声年齢が高い印象を与えますし、逆に高い声で抑揚がない話し方だと幼く聞こえます。この「高さ」と「抑揚」は意識すれば変えることができますよ。

>>次ページからは、効果別の“話し方”を伝授!

  • 注:心理学者アルバート・メラビアンが行った実験で、感情や態度について矛盾したメッセージが発せられたときの人の受けとめ方について、話の内容などの言語情報が7%、口調などの聴覚情報が38%、見た目などの視覚情報が55%とされたもの。

Realization: Mirei Hirose

  • ADVISER
    田中章浩/東京女子大学現代教養学部教授。博士(心理学)。東京大学大学院、早稲田大学高等研究所などを経て現職。コミュニケーションを支える認知メカニズムと、その文化差や個人差を中心に、視覚や聴覚などの五感を通して伝わる人間の多感覚コミュニケーションについて研究。新学術領域研究「トランスカルチャー状況下における顔身体学の構築—多文化をつなぐ顔と身体表現」で、顔と声からの多感覚コミュニケーション研究を展開中。
    http://tanakalab.sakura.ne.jp/

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