【第四回】どれが獲っても論争勃発!? グラミー賞2017をブッタ斬り
2017/02/10(金)
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双子の妊娠をインスタグラムで発表したビヨンセ courtesy of Beyonce via Instagram

ビヨンセの『レモネード』のアルバムとしての評価

ただ、ビヨンセの『レモネード』というアルバムは昨年2016年にリリースされたすべての作品と比較しても本当に大傑作だったんですね。もはや好き嫌いを越えて、音楽的にもリリック的にもすべてが革新的かつ圧倒的。前述のトラップのみならず、オーセンティックなR&B、ソウル、レゲエはもちろんのこと、おそらく昨年のベスト・ロック・トラックになるであろう曲まで含まれていた。なので、年間最優秀アルバム賞はビヨンセが獲るだろうと思います。

ビヨンセの『レモネード』から「ソーリー」

そして、今回のグラミー主要部門が完全に“アデルとビヨンセの闘い”になっていることから考えても、こちらでビヨンセに花を持たせて、前述の最優秀楽曲賞をアデルに与えることになるのでは。僕はそんな風に予想しています。まあ、賞レースというのはバランスでもありますから、そんなところかなと思います。

やはり第二回でお伝えした通り、何よりも今年のグラミーで注目すべきは、最優秀レコード賞を誰が受賞するか。すべての争点はここにあります。最優秀レコード賞がリアーナ、最優秀楽曲賞がアデル、最優秀アルバム賞がビヨンセ、という結果になれば、きれいに痛み分けという結果にもなるし、同時に、「バランス取りすぎで退屈でしょ」ということにもなりかねない。

この3賞をすべてをビヨンセ、もしくはアデルが獲ったりしたら、グラミー賞は振り切った、自らの批評軸を胸を張って世界に示した、流石だな、ということにもなるに違いありません。万が一そうなった場合、世界中がビヨンセ派とアデル派に分かれて喧々諤々ということになってしまいますから、難しいと思いますが。

とにかく最大のポイントは最優秀レコード賞です。リアーナか、アデルか、ビヨンセか。この賞を誰に与えるかで、世界中からのグラミー賞に対する見方が決定される。今回のグラミー賞の選考陣は胃痛で入院してもおかしくないと思います。

明日で最終回! CDを売らない(!?)歌手もノミネートされた“最優秀新人賞”について解説。

Text: soichiro tanaka Photo: Getty, Aflo

  • 田中宗一郎/音楽サイト「ザ・サイン・マガジン」のクリエイティブディレクター、音楽評論家、DJ。1963年、大阪府出身。雑誌『ロッキング・オン』副編集長を務めたのち、1997年に自ら音楽雑誌『スヌーザー』を創刊。その後、2013年秋にWEBメディア「ザ・サイン・マガジン」を開設。『スヌーザー』がオーガナイズするクラブイベント、クラブ・スヌーザーは全国各地にて現在も開催中。@soichiro_tanaka

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