ただただ辛かった“日々沼の日々”を振り返る

―主演作の『日々ロック』は、全編、猛ダッシュみたいな勢いのある映 画でしたが、日々沼の日々はいかがでしたか。
 
それがよく覚えていないんです（笑）。撮影している期間はそれこそ全身全霊で「日々沼」だったんです。なんかもう、やってること、なにもかも全部。だから、そこまで辛かったなとか、しんどかったなという思う間もなく、ただただ、日々沼として人生を送っていたなという感じでした。
 
―撮影が終わって、いちばん最初にしたことは？　撮影中「これをしたい！」という気持ちになりませんでしたか。
 
いやぁ、すごくなりました。とにかく、酒が飲みたかった！　忙しくて全く飲めてなかったので、あんなに酒が飲みたかったことはなかったですね～。
 
―それは役作りですか。それとも、スケジュール的に？
 
ただただ、スケジュールがキツくて。結果的にそれでよかったんですけどね。何も役作りしなくても、辛さが出せてたと思います。
 
―「金なし風呂なし彼女なし」で、全裸で絶叫するロックバカの日々沼という役に共感するところとか、まず、ないですよね？
 
ないですね（笑）。
 
―役が決まったときはどんな気持ちだったんですか。
 
オーディションだったんですけど、決まったときは、ロックが好きなわけじゃないし、音楽にも特に興味ないし、楽器もできないし……。そんな奴がこの役をやっていいのかなという気持ちになりました。ただ、決まったからにはやろうと決心して、決まった翌日から、ギターを貸してもらって、ずっと練習をしていましたよ。よく弾いていたのは泉谷しげるさんの「春夏秋冬」。原作にも出てきていて、最初は劇中でやるはずだったんです。結局、やらなくなったんだけど……。あれ？　なんで練習してたんだろう（笑）。でも、練習曲には最適だったので、よかったです。
 
―これまで、自分でバンドやろうと思ったことはなかったですか。
 
それがないんです。ギター、弾けないし、音楽をやって生きていこうという選択肢はなくて。ギターを弾いてみようと思ったことは何回かあるんですけど、僕には向いてない気がして、あんまり触ってこなかったんです。周りには触ってる奴いっぱいいるし、音楽好きな奴もいますけど、なぜか俺はそっちにはいかなかったんですよね。
 
―やってみて、何か変わりましたか。
 
やっぱ、難しかった！　やっぱり、ロックはわからないし、ギターって難しい。ただ歌手ってすごいなと思いましたね。僕ら、役者はアーティストの役はできるけど、本気で歌手にはなれない。ズルいのは歌手やアーティストは本気で役者もできてしまうんですよ。今回の作品にはいろんな歌手の人が役者として出ていて、つくづくそう思いました。