新作『君が君で君だ』が話題! 松居大悟監督インタビュー
2018/07/02(月)
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究極の恋愛とは、「好きな人の好きな人になる」ことだと思ったんです。

――『君が君で君だ』は、松居大悟監督らしい誰も思いつかないような奇抜なストーリーの映画ですが、どのように生まれたのでしょうか?

僕が「こういう映画が作りたい」と思って企画を持ち込んでも、「これはどこで共感するの?」と言われてしまうことが多く、だんだんと腹が立ってきて(笑)。「共感って本当に必要なのかな?」と考えてしまうんですね。

例えば恋愛映画だと、テーマや設定や時代を変えているけれど、みんな愛し方そのものに疑いを持たずに作っていると感じるんです。「好き」と言って一緒に過ごすとか、振られて悲しいとか、「これが恋愛である!」みたいなものがありますよね。でも、そうじゃない愛の形があっていいと思うんです。

中高の頃の僕は自信がなかったので、相手に想いを伝えられませんでした。だけど「伝えられる奴よりも俺は好きだからな!」という気持ちがあって、その気持ちを映画にできないかと考えていました。好きな人の好みに合わせて髪を伸ばすとか、悪そうな服装をすることによっていいと思われたいという想いの究極って「その人の好きな人になる」ということだと思うんですね。それは「愛している」の向こう側なのかも知れないけれど、そこから話を組み立てました。愛というものに対する問題提起をすることで映画にしてみましたが、僕はそういう映画があった方が救われるし、愛そのものを疑って欲しいなと思っています。

――映画が始まると、ストーカーまがいの行為や鎖で繋がれた男の姿が映し出されるなど、予想を覆す展開に少々戸惑います。しかし、物語が進んでゆくにつれて観客がだんだんと主人公たちの行動に対して理解を示すようになるという不思議な魅力を感じました。

「入り口が狭いな」ということは判っていました。なので、大団円のハッピーエンドを迎える「間口は狭いけど、出口は大きくしよう」ということを意識しました。

今回お芝居を作ってゆく時、各々の「愛している」という概念や、各々の物差しにおける“愛情”の尺度というものについて、役者の皆さんと話しました。ここで描かれていることが、もしかしたら犯罪に繋がったかも知れないであろう事件と究極的に違うのは、彼らは“愛情”について真剣に考え、下心みたいなものが存在しないところなんですね。

一方で、彼らの行動が一般常識として「間違っている」と言うべき人間も必要で、その人が女性である方がいいと思っていました。さらに「アンタたち間違っているよ!」という言葉には圧倒的な説得力が欲しくて、その役が出来るのはYOUさんしかいませんでした(笑)。

  • 『君が君で君だ』

    愛する女性のために、尾崎豊、坂本龍馬、ブラッド・ピットになりきり、自分を捨てた3人の男たちがいた。彼らはお互いを「尾崎」「龍馬」「ブラピ」と呼び合い、10年間に渡って彼女の棲む部屋の向い側に部屋を借り、静かに見守り続けていたのだ。ところがある日、平穏だった彼らの日常は混乱をきたすことになる…。松居大悟監督と主演の池松壮亮は、これまでも『自分の事ばかりで情けなくなるよ』(13)や『私たちのハァハァ』(15)などでも組んできた仲。尾崎を演じる池松壮亮のほか、龍馬に大倉孝二、ブラピに満島真之介、彼らが愛する女性を『息もできない』(10)のキム・コッピが演じている。またYOU、向井理、高杉真宙など豪華キャストが脇を固めているのも話題。

    7月7日(土)より新宿バルト9ほか全国公開。 
    https://kimikimikimi.jp/

Text:Takeo Matsuzaki  Photo:Michika Mochizuki

  • 松崎健夫(まつざき・たけお)

    映画評論家。『キネマ旬報』などに寄稿し、『WOWOWぷらすと』『ZIP!』『japanぐる〜ヴ』に出演中。共著『現代映画用語事典』ほか。

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