今さら聞けないアカデミー賞10の常識
2017/02/02(木)
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Photo: Getty Images

アカデミー賞は6000人以上のハリウッド映画人が決める

1.当初はショー形式ではなく晩餐会形式たった
 
 そもそも、アカデミー賞は「映画界の発展を目的として、監督・俳優・スタッフを表彰。その成果を讃えるための映画賞」として創設、1929年に第1回が開催された。一説には、“映画業界の厳しい環境下で働く人々の労をねぎらう労働組合対策として創設された”とも。当初は、現在のようなショー形式ではなく晩餐会形式。第1回の授賞式では、招待状に受賞者の名前が既に記載され(3ヶ月前には受賞者へアナウンス済)、式自体はわずか4分30秒で終了。その後、第二次世界大戦中に「晩餐会形式は不適切ではないか」という意見が持ち上がり、ラジオ中継やテレビ中継の発達を伴って、現在のようなショー形式に移行している。
 
 
2.映画業界内の“身内”が賞を授与する
 
 アカデミー賞もゴールデン・グローブ賞と同様、投票によって決定されるのだが、その大きな違いは、監督、プロデューサー、俳優、撮影や編集などの技術者で構成される“映画芸術アカデミー”のアカデミー会員が投票権を持っていること。つまり、アカデミー賞がカンヌ国際映画祭やゴールデン・グローブ賞などほかの映画賞と違うのは、「ハリウッド映画人」という、言わば映画業界の“身内”が賞を授与して御祝いする、という点にある。
 
 
3.公平性が世界有数の会計事務所で管理されている
 
 会員の数は、6261人(2014年末現在)。作品賞に対しては全てのアカデミー会員に投票権がある一方で、演技部門・監督部門・技術部門は同じ部門に所属する会員のみが投票できるという仕組み。その公平性は、世界有数の会計事務所の管理によって徹底されている。例えば、1968年の第41回授賞式では主演女優賞の得票が同数であったため、バーブラ・ストライザンドとキャサリン・ヘップバーンが同時受賞を果たした。この珍事からも公平性が裏付けられている。
 
 
4.作品賞は全体の5%以上支持がないとノミネート不可
 
 作品の国籍は問われないが、ロサンゼルス地区での上映以前にアメリカ国内でテレビ、ビデオ、ネット等で公開されたものは対象外。最終的に作品賞の候補となるのは最大10本と規定されている。実は、2008年の第81回まで5本だった作品賞候補が、第82回から“最大10本”に変更された。これは、アート志向の作品が候補となることが増えたため、エンタメ系の大作映画が候補から漏れるようになったから。そのきっかけは、第81回で前評判の高かった『ダークナイト』が、候補にすらならなかったからと言われている。
 
 以降、候補作品は10本~9本の間で推移。今回の作品賞候補は9本だったが、これは「全体の5%の得票を獲得した作品のみ」という規定によるもの。つまり、10本目だった作品は得票が5%を下回っていたということ。

『ダークナイト』/Photo: AFLO

Text: Takeo Matsuzaki

  • 松崎健夫(まつざき・たけお)
    映画評論家。『キネマ旬報』などに寄稿し、『WOWOWぷらすと』『ZIP!』『japanぐる〜ヴ』に出演中。共著『現代映画用語事典』ほか。

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